育児休業・介護休業の制度

育児休業給付金 雇用保険の条件は?受給資格と増額のコツ

育児休業給付金 雇用保険の条件

育児休業を取得する際、経済的な支えとなる育児休業給付金。しかし「自分はもらえるの?」「雇用保険の加入期間は足りる?」といった不安はつきものです。

この記事では、育児休業給付金の受給に必要な雇用保険の条件や、2025年4月からの新制度、万が一もらえない場合の疑問まで分かりやすく解説します。

【忙しい方へ:要点まとめ】

育児休業給付金を受給するには、原則として育休開始前2年間に、雇用保険の被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)が12か月以上必要です。有期契約の方は別途、雇用継続の見込みも問われます。2025年4月からは新制度も始まり、給付内容が手厚くなる可能性がありますので、最新情報を確認しましょう。

この記事の結論

  • 育休給付金の受給には雇用保険の一定期間加入が必須
  • 2025年4月から新給付が始まり手取り増の可能性も
  • 働き方や退職予定で条件が変わるため事前の確認が重要
  • 不明点は早めにハローワークや勤務先に相談しよう

育児休業給付金 雇用保険の条件とは?まず基本を解説

育児休業給付金 雇用保険の条件

この記事で分かること

  • 育児休業給付金をもらうための雇用保険の具体的な加入条件
  • 正社員、契約社員、パートなど働き方による条件の違い
  • 2025年4月開始の「出生後休業支援給付」「育児時短就業給付」の概要
  • 申請手続きの流れや、退職を考えている場合の注意点
  • 給付金がもらえない主なケースとよくある質問への回答

育児と仕事の両立に悩む時期こそ、制度のことを正しく知って、安心できる準備をしていきましょう。

育児休業は、子育てをする労働者のための大切な権利です。その期間中の生活を経済的に支えるのが「育児休業給付金」という仕組み。これは、雇用保険制度から支給されるもので、働くパパママが安心して育児に専念できるよう支援することを主な目的としています。

この給付金を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があり、その中でも特に重要なのが雇用保険への加入状況です。財源が雇用保険であるため、被保険者であることが大前提。まずは、この制度の基本的な仕組みと目的を理解することから始めましょう。

育児休業給付金の主な目的

  • 育児休業期間中の所得を保障する
  • 育児と仕事の両立をサポートする
  • 育児による離職を防ぎ、雇用の継続を促す

給付金をもらうための雇用保険加入期間と働き方のポイント

育児休業給付金 雇用保険の条件

育児休業給付金の受給資格を得るためには、雇用保険に関するいくつかの具体的な要件を満たさなくてはなりません。ここでは、特に重要な被保険者期間の考え方や、働き方によって異なる注意点、そして残念ながら支給対象とならないケースについて掘り下げて見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせて確認してみてください。

あなたは対象?被保険者期間を正しく算定

育児休業給付金を受け取るための最も基本的な条件は、育児休業を開始した日より前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(完全月)が12か月以上存在することです。この「賃金支払基礎日数」には、実際に働いた日数だけでなく、有給休暇や会社都合の休業で休業手当が支払われた日も含まれます。つまり、給与計算の対象となった日数で判断されるわけです。

月給制で毎月暦日数分の賃金が支払われている場合、その月は賃金支払基礎日数11日以上と見なされるのが一般的です。この条件を満たしているかどうかが、受給資格の最初の関門。

もし、この2年間に病気やケガ、あるいは第一子の育児休業などで30日以上賃金の支払いを受けられなかった期間がある方は、その日数を加算して最大4年間まで遡って算定できる緩和措置もありますので、該当する場合は確認が必要です。(厚生労働省参照

対象期間の考え方詳細
原則育休開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上
賃金支払基礎日数出勤日、有給休暇取得日、休業手当の対象日などを含む
緩和措置の例病気・ケガ、本人の育児休業・介護休業などで賃金支払いがなかった期間は、2年間に加算可能(最大4年まで)

働き方で変わる?有期契約やパートの留意事項

正社員だけでなく、契約社員やパートタイム労働者といった有期雇用で働く方も、前述の被保険者期間の条件を満たせば育児休業給付金の対象となります。しかし、有期雇用労働者の場合は、これらの基本条件に加えて、育児休業開始時点で、子が1歳6か月に達する日(特定の延長事由がある場合は2歳に達する日)までの間に労働契約が満了することが明らかでないことが求められます。

実際に『パートでも育休手当はもらえるの?』というご質問をよくいただきます。雇用形態に関わらず、条件を満たせばしっかり支給されますので、あきらめないでくださいね。

これは、育児休業給付金が職場復帰を前提とした制度であるためです。契約更新の有無や、更新される場合の契約期間などが重要なポイント。産後パパ育休(出生時育児休業)を取得する際の出生時育児休業給付金についても、同様に休業後の雇用継続に関する要件が設定されています。勤務先との間で、育児休業後の雇用契約について事前にしっかりと確認しておくことが、安心して休業に入るために不可欠です。

支給されないのはどんな時?主なNGケースとその理由

育児休業給付金の支給条件を満たしていても、残念ながら給付金を受け取れないケースも存在します。最も多いのは、前述した雇用保険の被保険者期間が基準に満たない場合です。とりわけ、転職して間もない方や、過去に離職期間が長かった方は、この点に注意が必要でしょう。

また、育児休業の申し出時点で既に退職が決まっている場合も、原則として支給対象外となります。育児休業給付金は、休業後の職場復帰を前提としているからです。(厚生労働省のQ&A Q30参照)さらに、育児休業期間中に就業する日数や時間が一定の上限を超えてしまうと、その期間の給付金は支給されません。例えば、育児休業給付金の場合、1支給単位期間中の就業日数が10日(または80時間)を超えると対象外となります。

主な不受給ケース

  • 雇用保険の被保険者期間が12か月に満たない。
  • 育児休業開始時点で退職が予定されている。
  • 育児休業期間中の就業日数・時間が上限を超過した。
  • 休業期間中に支払われた賃金が、休業開始前賃金の80%以上ある。

いくらもらえる?支給額の計算と知っておきたい新制度

育児休業給付金 雇用保険の条件

育児休業給付金が具体的にいくらもらえるのかは、休業中の生活設計において非常に重要な情報です。ここでは、基本的な給付金の計算方法や受け取れる期間、そして2025年4月から始まる新しい給付制度について解説します。これらの情報を基に、ご自身の状況に合わせたシミュレーションをしてみると良いでしょう。

基本的な給付金の計算方法と受け取れる期間

育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額」に支給日数を掛け、一定の給付率を乗じて計算されます。休業開始時賃金日額とは、原則として育児休業開始前6か月間の賃金(賞与は除きます)を180で割った額です。

給付率は、育児休業開始から180日目までは賃金日額の67%、181日目以降は50%です。支給日数は、原則として1支給単位期間あたり30日。給付金は原則として、子が1歳に達する日(1歳の誕生日の前々日)まで支給されますが、「パパ・ママ育休プラス制度」の利用や、保育所に入れないなどの特定の理由がある場合は、最長で子が2歳に達する日まで延長可能です。

なお、支給額には上限と下限が設定されており、毎年8月1日に見直されます。

育児休業中に受け取れる給付金の計算方法と支給の概要は次の通りです。

まず、「休業開始時賃金日額」を算出することから始まります。 これは、育児休業を開始する直前の6ヶ月間の賃金合計を180で割って計算されます。

次に、この日額を基に実際の支給額が計算されますが、支給率は育休の期間によって変動します。

  • 育休開始から180日間まで: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 育休開始181日目以降: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

給付金が支給される期間は、原則としてお子さんが1歳になるまでです。 ただし、保育所に入所できないなど、特定の条件を満たす場合には、最長でお子さんが2歳になるまで延長される可能性があります。

なお、支給される金額には上限および下限が定められており、これらの基準額は毎年8月1日に見直しが行われます。

育児休業中に副業で少しだけ働いたら、給付金はどうなりますか?

副業は可能ですが、1か月の中で働いた日数が10日または80時間を超えると、その期間の給付金は受け取れなくなってしまいます。短時間の在宅ワークなどであれば条件を満たせることもありますので、事前に勤務先やハローワークに確認すると安心ですよ。

2025年4月開始!出生後休業支援給付で手取りアップ?

2025年4月1日から、新たに「出生後休業支援給付金」という制度が始まりました。これは、従来の育児休業給付金(出生時育児休業給付金または育児休業給付金)に上乗せして支給されるもので、子の出生後の特に支援が必要な時期の経済的サポートを手厚くすることを目的としています。この給付金により、実質的な手取り額が増えることが期待されます。(厚生労働省のQ&A Q24, Q27参照)

支給対象となるのは、被保険者とその配偶者が、子の出生後8週間(母親の場合は産後休業期間を考慮し16週間)以内にそれぞれ14日以上の育児休業(産後パパ育休含む)を取得した場合など、一定の要件を満たした方です。支給額は、休業開始時賃金日額に支給日数(上限28日)を乗じ、13%を掛けた額。これにより、育児休業給付金の67%と合わせると、休業開始時賃金の約80%相当の給付が受けられる計算です(社会保険料免除等を考慮すると手取り10割相当とされています)。

出生後休業支援給付金のポイント

  • 2025年4月1日施行の新しい給付金
  • 育児休業給付金に上乗せで支給される
  • 夫婦での育休取得などが主な受給要件
  • 最大28日間、休業開始時賃金日額の13%相当を上乗せ
  • 育休給付金と合わせて、実質的に手厚い支援に

新登場!育児時短就業給付という賢い選択肢

2025年4月1日からは、「出生後休業支援給付金」と同時に「育児時短就業給付金」も開始されました。こちらは、2歳未満の子を養育するために時短勤務制度を利用する被保険者に対して、その期間中に支払われた賃金額の10%を上乗せして支給する制度です。育児休業からのスムーズな職場復帰と、育児と仕事の両立をさらに後押しすることが期待されています。(厚生労働省のQ&A Q38, Q47参照)

この給付金を受けるためには、育児時短就業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること、または育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について育児時短就業を開始したことなどの受給資格を満たすことが求められます。支給対象となるのは、育児時短就業を開始した月から終了した月まで。

ただし、時短勤務後の賃金とこの給付金の合計額が、時短勤務開始前の賃金月額を超えないよう調整される場合があります。

ハローワークでの申請手続きと退職検討時の注意点

育児休業給付金 雇用保険の条件

育児休業給付金を受け取るためには、ハローワークへの適切な申請手続きが欠かせません。また、育児休業の取得や給付金の受給を考えている方の中には、将来的な退職を視野に入れているケースもあるでしょう。ここでは、申請手続きの基本的な流れと、退職を検討している場合の重要な注意点について整理します。

どこで申請?ハローワークでの手続きステップ解説

育児休業給付金の申請手続きは、原則として勤務先の事業主を経由して、事業所の所在地を管轄するハローワークに対して行います。被保険者本人が希望すれば、直接ハローワークで手続きすることも可能ですが、会社側が準備する書類などもあるため、まずは勤務先の人事・労務担当者に相談するのがスムーズでしょう。(厚生労働省のQ&A Q33, Q35参照)

初回の申請では、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」や「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」、母子手帳の写しといった書類が必要になります。2回目以降は、ハローワークから交付される支給申請書と賃金台帳などで手続きを進められます。申請期限は、例えば初回の支給申請であれば育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までと定められています。不明な点は、早めにハローワークに問い合わせて確認することをおすすめします。

申請手続きの主な流れ

  • 勤務先に育児休業の取得を申し出る。
  • 勤務先から必要書類(申請書など)を受け取る。
  • 必要書類に記入し、母子手帳の写しなどを添付して勤務先に提出。
  • 勤務先がハローワークに申請手続きを行う(本人が行う場合もある)。
  • ハローワークでの審査後、支給決定通知書が交付され、給付金が振り込まれる。

以降、原則2か月ごとに勤務先経由で支給申請を行う。

育休前の退職は不利?タイミングと重要ポイント

育児休業給付金は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした制度です。そのため、育児休業の申し出時点で既に退職を予定している場合は、原則として支給対象となりません。この点は、誤解しやすいため十分に理解しておく必要があります

ただし、育児休業給付金の受給資格確認を受けた後に、やむを得ない事情で退職することになった場合は、それまでに受給した給付金を返金する必要はありません。

また、令和7年4月1日以降に退職した場合は、退職日までの期間が支給対象となります(それ以前は退職日を含む支給単位期間の一つ前の期間まででした)。退職を考えている場合は、そのタイミングが給付金の受給に影響する可能性があるため、慎重な判断が求められます。

退職予定の状況給付金の取り扱い
育休申出時に既に退職予定原則、支給対象外
受給資格確認後に退職決定それまでの受給分は返金不要。退職日まで支給対象(R7.4.1以降)
育休中に退職日が到来退職日までが支給対象(R7.4.1以降)

退職か継続か…私も育休中にたくさん悩みました。ひとりで抱え込まず、信頼できる人に相談しながら進めていきましょうね。

気になる疑問 遡って雇用保険には加入できるか

「育児休業給付金をもらうために、今から遡って雇用保険に加入できないだろうか」という疑問を抱く方がいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながら雇用保険制度には、遡って加入するという仕組みは原則として存在しません。雇用保険の被保険者資格は、雇用された事実に基づいて取得されるものであり、後から任意で加入日を過去に遡らせることはできないのです。

育児休業給付金の受給条件である「育児休業を開始した日より前の2年間に、被保険者期間が12か月以上」という規定は、実際に雇用保険に加入していた実績期間を指します。したがって、給付金を受給するためには、育児休業を取得するより前に、計画的に雇用保険の加入期間を満たしておくことが不可欠です。

育休手当に関するよくある質問と大切な準備の総まとめ

育児休業給付金 雇用保険の条件

ここまで育児休業給付金(育休手当)の雇用保険に関する条件や新制度について詳しく見てきましたが、まだ細かな疑問が残っている方もいらっしゃるかもしれません。この最後の項目では、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式で解消し、記事全体の要点を再確認するとともに、今後スムーズに手続きを進めるための準備についてお伝えします。

みんなが知りたい疑問をQ&Aでスッキリ解消

育児休業給付金に関して、よく寄せられる質問とその回答を以下にまとめました。

育児休業給付金は、どこから支給されるのですか?

育児休業給付金は、国の雇用保険制度から支給されます。申請手続きは、原則として勤務先の事業主を通じて、その事業所を管轄するハローワークに対して行います。

育児休業給付金は課税対象になりますか?

いいえ、育児休業給付金は非課税所得です。そのため、所得税や住民税の計算において収入として扱われることはありません。

育児休業期間中に少しだけ働くことはできますか? その場合、給付金はどうなりますか?

育児休業中でも、一時的・臨時的に就業することは可能です。ただし、1支給単位期間中の就業日数が10日(10日を超える場合は就業している時間が80時間)を超過すると、その期間の給付金は支給されません。また、支払われた賃金の額に応じて給付額が減額されることもありますので注意が必要です。

育児休業給付金の申請を忘れていました。今からでも申請できますか?

育児休業給付金の申請には時効があり、支給対象となる各期間の初日から起算して2年以内であれば申請可能です。しかし、手続きが遅れると当然ながら支給も遅れてしまいますので、気づいた時点ですぐに勤務先や管轄のハローワークに相談しましょう。

最後に確認!記事の要点と今後に役立つ準備

育児休業給付金 雇用保険の条件

育児休業給付金を確実に受給し、安心して育児に専念するためには、雇用保険の条件を正しく理解し、計画的に準備を進めることが何よりも大切です。特に、ご自身の雇用保険加入期間が条件を満たしているかの確認は必須と言えるでしょう。

これからの具体的なステップとしては、まず勤務先の人事・労務担当者に育児休業取得の意向を伝え、社内で必要な手続きや提出書類について確認することから始めましょう。2025年4月からは「出生後休業支援給付金」や「育児時短就業給付金」といった新しい支援制度も始まっています。これらの最新情報も併せて収集し、利用できる制度は最大限に活用することをおすすめします。もし不明な点や不安なことがあれば、ためらわずに早めにハローワークに相談することも有効な手段です。

育児休業給付金の制度は、安心して子育てに専念するための重要なセーフティネットです。この記事で解説した条件や手続きをしっかり理解し、新しい家族との貴重な時間を有意義に過ごせるよう願っています。

-育児休業・介護休業の制度