「〇〇さん、産休に入るんだって!おめでとう!」
職場でそんな嬉しいニュースが聞こえてきたとき、あなたは心から「おめでとう」と言えていますか?もちろん、新しい命の誕生は喜ばしいこと。でも、その裏側で「あの人の業務、誰がやるんだろう…」「また私の負担が増えるのかな…」という、言葉にできない不安が心をよぎることはありませんか?
もしあなたがそんな風に感じて罪悪感を抱いているなら、まず知ってください。その悩みは、決してあなた一人のものではありません。
最近発表されたある調査で、育休や時短勤務の同僚の業務をサポートした経験がある人のうち、実に77.6%もの人が「課題を感じたことがある」と回答したのです。
この記事では、その調査結果を紐解きながら、多くの働くママたちが抱える「育休フォローのモヤモヤ」の正体に迫ります。そして、その負担を一人で抱え込まず、自分もチームも守るための具体的なアクションを一緒に考えていきましょう。
【調査結果】育休フォローの最前線で起きている「4つの不都合な真実」
今回明らかになったのは、これまで「助け合い」「お互い様」という言葉のもとで見過ごされがちだった、フォローする側のリアルな声です。株式会社MS-Japanが実施した調査から、特に重要な4つのポイントを見ていきましょう。
真実1:77.6%が業務代替に課題。最多は「業務負担の増加」
育休・時短社員の業務を代替した経験がある人のうち、77.6%が課題を感じているという衝撃的な数字。その内容で最も多かったのが「業務量が増え、負担や疲労が大きくなった」(65.4%)でした。
「通常業務に支障が出た」「ワークライフバランスが崩れた」という声も3割を超えており、フォローする側の善意や努力だけでは、もはや限界に達している状況が浮き彫りになっています。
真実2:「代替要員がいない」が育休取得の最大の壁に
一方で、これから育休を取得する側も、大きな不安を抱えています。育休取得・検討時に懸念したこととして最も多く挙げられたのは「代替要員がいない」(29.0%)でした。
これは、「自分が休むことで、同僚に多大な迷惑をかけてしまうのではないか」という罪悪感につながります。この問題は、休む側・フォローする側双方にとって、大きな心理的ハードルとなっているのです。
真実3:フォロー制度がある企業はわずか35.3%
これほど多くの人が課題を感じているにもかかわらず、代替業務を行う社員への手当支給や人員配置といった「育児休業フォロー制度」を何らかの形で導入している企業は、全体の35.3%にとどまっています。
さらに驚くべきことに、制度が未導入の企業のうち72.1%は「導入を検討したことや話題に出たことすらない」と回答しており、問題の重大さが経営層にまで届いていない実態がうかがえます。
真実4:求められているのは「評価」と「報酬」という正当な対価
では、フォローする側は一体何を求めているのでしょうか。「あったら良いなと思う取り組み」について尋ねたところ、「フォローへの貢献を人事評価に反映する制度」(40.0%)と「フォローする社員への手当の支給」(39.5%)がトップ2に並びました。
これは、「頑張りをきちんと認めてほしい」「増えた負担に見合う対価が欲しい」という、至極当然の願いの表れと言えるでしょう。
なぜ「育休フォロー問題」は見過ごされてきたのか?
これらのデータから見えてくるのは、「助け合い」という美しい言葉の裏で、フォローする個人の自己犠牲に依存してきた日本企業の構造的な問題です。
「お互い様だから」という同調圧力のもと、増えた業務も、乱れたワークライフバランスも、すべて個人の責任として処理されてきました。しかし、これはもはや個人の問題ではなく、企業が組織として向き合うべき経営課題なのです。
安心して子どもを産み育てられる社会を実現するためには、「休みやすい制度」と同時に、「安心して休ませることができる体制」を構築することが不可欠です。
明日からできる!「育休のしわ寄せ」から自分を守る3つのアクション
「でも、会社が動いてくれるのを待っていられない…」というのが本音ですよね。では、今の状況で私たちに何ができるのでしょうか。自分自身とチームを守るために、明日からできる3つの具体的なアクションをご紹介します。
アクション1:「業務の見える化」で負担増を客観的に示す
まずは、育休に入る同僚から引き継ぐ業務と、自分自身の通常業務をすべてリストアップし、「見える化」しましょう。
- 何を(What):具体的なタスク内容
- どれくらい(Volume):そのタスクにかかる想定時間
- いつまでに(Deadline):納期
これを一覧にすることで、「感覚的に大変」から「客観的にこれだけの業務量が増加する」という事実を、上司やチームメンバーと具体的に共有できます。感情的に訴えるのではなく、事実ベースで相談することが、冷静な議論の第一歩です。
アクション2:会社の制度を確認し、「評価」や「手当」について声を上げる
あなたの会社の就業規則や人事評価制度を、一度じっくりと確認してみましょう。育休フォローに関する規定がなくても、業務貢献度を評価する項目があるかもしれません。
上司との面談などの機会に、先ほどの「業務リスト」を元に、「この追加業務を達成した場合、評価にどのように反映されるのか」を具体的に質問してみましょう。すぐには制度が変わらなくても、「フォロー業務は無償のボランティアではない」という意識を組織に示すことが重要です。
アクション3:外部リソース(派遣社員)の活用をチームで提案する
根本的な解決策は、チーム全体の業務量を調整することです。その最も有効な手段の一つが、期間限定での派遣社員の活用です。
「いきなり派遣社員の活用を提案するのはハードルが高い…」と感じるかもしれません。しかし、優秀な派遣会社は、企業のニーズに合わせて短期間からでも柔軟にスキルを持つ人材を提案してくれます。
上司に提案する際は、「〇〇さんの業務のうち、この部分を派遣の方にお願いすることで、チーム全体の負担を△△時間削減でき、通常業務の質を維持できます」といったように、具体的なメリットを添えて話すのが効果的です。
まずはどのような選択肢があるのか、情報収集から始めてみませんか?当サイトの「ママにおすすめの派遣会社ランキング」では、サポート体制が手厚い派遣会社を厳選して紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:安心して「休み、休ませる」職場を目指して
同僚の育休を心から祝福できないのは、あなたの心が狭いからではありません。それは、フォローする側への配慮が欠けた、組織の仕組みが生み出す「痛み」のサインです。
その小さな痛みを「お互い様」という言葉で見て見ぬふりをするのではなく、勇気を持って言語化し、解決策を探していくこと。それが、あなた自身が将来安心して休む権利を守り、ひいては誰もが働きやすい職場環境を作ることにつながっていきます。
まずは「業務の見える化」から、小さな一歩を踏み出してみませんか?
出典:MS-Japan調べ(https://www.manegy.com/news/detail/13246/)