「もしも夫や自分に万が一のことが…」 お子さまのことを思うと、ふと教育費のことが心配になりますよね。「学資保険で親が死んだらどうなるの?」 その不安な気持ちに寄り添い、保険料の免除や税金、必要な手続きについて、一つひとつ丁寧に解説します。
【はじめに結論】万が一、契約者である親が亡くなった場合、多くの学資保険ではその後の保険料の支払いが免除されます。保障はそのまま継続され、満期保険金やお祝い金も予定通り受け取れることがほとんどです。ただし、この払込免除は自動的に適用されるわけではなく、ご家族からの連絡と手続きが必要になります。
この記事で分かること
- 契約者である親が死亡した際の保険料の扱い
- 払込免除や名義変更など、必要な手続きの具体的な流れ
- 満期保険金にかかる相続税や贈与税など、税金の注意点
- 万が一の時に慌てないために、今から確認しておくべきこと
- 払込免除特約がないなど、ケース別の対処法
学資保険で親が死亡したら?まず知るべき3つのこと

「もしも」の時、どうなるんだろう…? そんな不安を抱える気持ち、とてもよく分かります。まずは結論からお伝えしますので、少し肩の力を抜いて読み進めてみてください。
結論として保険料の支払いは免除されることが多いです
まず、ご安心ください。多くの学資保険には「保険料払込免除特約」という、もしもの時のお守りのような大切な保障が付いています。これは、保険料を支払っている契約者(お父さまやお母さま)が万一亡くなられたり、所定の高度障害状態になられたりした場合、その後の保険料の支払いが全額免除されるという仕組みです。
この特約のおかげで、一家の働き手に万が一のことがあっても、お子さまの将来の教育資金計画が中断されることなく、しっかりと守られるようになっています。
保険料払込免除特約とは?
- 契約者に万が一のことがあった際、以後の保険料の支払いが不要になる保障。
- 多くの学資保険に標準で付いているか、オプションで追加できる。
- 家計への負担なく、教育資金の準備を続けられる心強いセーフティネットの役割を果たす。
満期保険金は契約通りに満額受け取れるのでご安心を
保険料の支払いが免除になった後、「受け取れる満期保険金が減ってしまうのでは?」と心配になるかもしれませんが、その点も大丈夫です。
保険料の支払いが免除されても、契約そのものは有効に継続されます。そのため、進学のタイミングで受け取れるお祝い金や満期保険金は、**当初の契約で約束された金額が満額支払われます。**返戻率などが変わることもありません。お子さまの未来のために準備してきた大切なお金が、きちんと守られるので安心してください。
ただし自動適用ではない!すぐに行うべき手続きとは?
ここで一つだけ、とても大切な注意点があります。それは、保険料の払込免除は自動的に適用されるわけではない、という点です。契約者が亡くなられた後、ご家族が保険会社に連絡し、所定の手続きを行って初めて適用されます。
もし連絡を忘れてしまうと、保険料の引き落としが続いてしまったり、支払いが滞って契約が失効してしまったりする可能性もゼロではありません。大変な状況の中ではありますが、できるだけ速やかに保険会社へ連絡することが、保障を確実に受け取るための第一歩となります。
「もしも」の時、本当に大丈夫?パパママ共通の不安を整理

子育て中は、毎日があっという間。でも、ふとした瞬間に「この子の将来のために、今のままで大丈夫かな」と、漠然とした不安がよぎること、ありますよね。
「保険料を払い続けられるか…」という経済的な心配
ニュースなどで不慮の事故の報道に触れると、「もしうちの夫が…」「もし自分が…」と、ご自身の家庭に置き換えて考えてしまいますよね。遺された家族が、今まで通り保険料を払い続けられるだろうか、という経済的な不安は、子育て中のご家庭にとって最も切実な悩みの一つです。
特に、パート収入とご主人の給料で家計を支えている場合、収入が減る中で保険料という固定費の負担は非常に重くのしかかります。「子どもの学費のために始めたのに、それが家計を圧迫するなんて…」 そんなジレンマは、誰しもが抱える不安です。
「保障内容がうろ覚え…」保険証券を確認しない不安
「そういえば、うちの学資保険、払込免除は付いていたかな…?」 いざという時の保障内容を正確に覚えていないことも、不安を大きくさせる原因の一つです。
契約時に説明は受けたはずでも、数年も経つと細かい条件までは忘れてしまいがち。クローゼットの奥にしまった保険証券がどこにあるか分からなかったり、見ても専門用語が難しくてよく理解できなかったりすることもあるでしょう。手元に確かめられるものがない、あっても内容が分からないという状態が、「本当に大丈夫だろうか」という漠然とした不安につながってしまいます。
「誰に相談すればいいの?」手続きの複雑さへの戸惑い
万が一の事態が起こった時、ただでさえ精神的に大変な中で、保険や相続に関する複雑な手続きをこなさなければならない、と考えると気が重くなりますよね。
「まずどこに電話すればいいの?」「どんな書類が必要なの?」「税金のことなんて、さっぱり分からない…」など、やるべきことの多さや専門性の高さに、一人で抱え込んでしまい戸惑ってしまう方も少なくありません。誰に、どの順番で相談すればスムーズに進むのかが分からないことも、大きな不安材料となります。
契約者死亡後の手続きと税金、知っておべき全知識
いざという時に慌てないために、ここからは具体的な手続きやお金の話をしていきます。少し専門的な内容も含まれますが、分かりやすく説明しますので、一緒に確認していきましょう。
STEP1:まず保険会社へ連絡し、払込免除を申請する
契約者が亡くなられた際に、まず行うべきことは保険会社への連絡です。保険証券を手元に準備し、お客様サービスセンターなどに電話をかけ、契約者が死亡した旨を伝えましょう。その後の手続きについて、必要な書類や流れを丁寧に案内してくれます。
一般的に、払込免除と名義変更の手続きは同時に行います。
手続きの一般的な流れ | 補足説明 |
1. 保険会社へ連絡 | 契約者の氏名、証券番号、死亡年月日などを伝える。 |
2. 必要書類の取り寄せ | 保険会社から手続き用の書類一式が郵送されてくる。 |
3. 書類の記入・準備 | 死亡診断書や戸籍謄本、新しい契約者の本人確認書類などを用意。 |
4. 書類の提出 | 記入・捺印した書類と、準備した証明書類を保険会社へ返送する。 |
5. 手続き完了 | 保険会社での確認が完了すれば、払込免除が適用され名義変更が完了。 |
契約者の名義変更と新しい受取人の指定は誰にすべき?
契約者が亡くなった場合、その保険契約を引き継ぐ新しい契約者(後継契約者)を決める必要があります。一般的には、残された配偶者の方が引き継ぐケースが多いです。
このとき、税金面で非常に重要になるのが**「新しい契約者」と「満期保険金の受取人」を同一人物に設定する**ことです。もし、新しい契約者を母親、受取人を子どもに設定してしまうと、満期金が「母親から子どもへの贈与」とみなされ、高い税率の贈与税がかかる可能性があります。(参考:国税庁 No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき)
設定パターン | 適用される税金 | 特徴 |
契約者=受取人 | 所得税(一時所得) | 利益部分に50万円の特別控除があり、税負担が軽くなることが多い。 |
契約者≠受取人 | 贈与税 | 基礎控除(年間110万円)を超える部分に課税され、税負担が重くなる傾向がある。 |
手続きの際には、新しい契約者自身を受取人に指定することを忘れないようにしましょう。
相続財産になる?遺産分割で揉めないための注意点
学資保険は、契約者が亡くなった時点で「生命保険契約に関する権利」として、解約返戻金に相当する金額が相続財産とみなされます。 これは、まるで預貯金や不動産などと同じように、遺産分割の対象となることを意味します。
相続人が複数いる場合(例えば、配偶者と子どもたち)、誰がこの保険契約を引き継ぐのかを、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決める必要があります。特定の相続人が引き継ぐことに全員が合意すれば、その方が新しい契約者となります。万が一、合意に至らない場合は、保険を解約して解約返戻金を分割することも考えられますが、それでは教育資金を準備するという本来の目的が果たせなくなるため、注意が必要です。
気になる税金の話:相続税・贈与税・所得税の全パターン
学資保険と契約者の死亡に関連する税金は、タイミングと誰が関わるかによって種類が変わるため、少し複雑に感じるかもしれません。ここで全体像を整理しておきましょう。
- 相続税
- タイミング: 契約者が死亡した時
- 対象: 保険契約の権利(死亡時点の解約返戻金相当額)
- ポイント: 預貯金など他の遺産と合算し、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に課税される。(参考:国税庁 No.4105 相続税のしくみ)
- 所得税 or 贈与税
- タイミング: 満期保険金や祝い金を受け取った時
- 対象: 受け取った保険金
- ポイント: 先に述べた通り、「契約者(保険料負担者)=受取人」であれば所得税、「契約者≠受取人」であれば贈与税の対象となる。
このように、「相続時」と「満期受取時」の2つのタイミングで税金が関わってくる可能性があることを理解しておくことが大切です。
ケース別解説|祖父母が契約者の場合や死亡保障なしの備え

ご家庭によっては、少し状況が異なるケースもあるかと思います。ここでは、いくつかの具体的なケースについて見ていきましょう。
祖父母が契約者だった場合の相続手続きと注意すべき点
おじいさま・おばあさまがお孫さんのために学資保険の契約者になっているケースもありますよね。この場合、契約者である祖父母が亡くなられると、その学資保険は祖父母の相続財産の一部として扱われます。
手続きの流れは基本的に同じですが、注意点がいくつかあります。
- 相続人が複数いる可能性: 亡くなった祖父母のお子さま(つまり、お父さまやお母さまの兄弟姉妹)も相続人となります。そのため、誰が保険契約を引き継ぐのか、相続人全員での合意形成がより重要になります。
- 相続税への影響: 祖父母が他にも多くの財産をお持ちの場合、学資保険の権利が加わることで、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
- 名義変更: 新しい契約者は、一般的に子どもの親権者であるお父さまやお母さまになります。
死亡給付金や育英年金がある場合の税金はどうなる?
学資保険の商品によっては、契約者が死亡した際に、満期金とは別に一時金(死亡給付金)や、年金(育英年金・養育年金)が支払われる特約が付いていることがあります。
これらの保障がある場合、税金の扱いが少し特殊なので注意が必要です。
- 死亡給付金(一時金): 受け取った場合、相続税法上の「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使える場合があります。
- 育英年金(年金):
- まず、契約者死亡時に、将来にわたって年金を受け取る権利そのものが相続税の対象となります。
- その後、毎年実際に受け取る年金は、受取人の**所得税(雑所得)**の対象となります。
このように、年金タイプは相続税と所得税の両方が関わってくる複雑な仕組みになっています。
「死亡保障なし」プランに加入していた時の確認事項
ごく稀に、保険料を抑える代わりに「保険料払込免除特約」が付いていない学資保険も存在します。もしご加入のプランがこのタイプだった場合、残念ながら契約者が亡くなっても保険料の支払いは免除されません。
契約を引き継いだ新しい契約者が、満期まで保険料を支払い続ける必要があります。もし支払いが困難な場合は、契約を途中で解約せざるを得ず、それまでに払い込んだ保険料の総額を下回る解約返戻金しか受け取れない「元本割れ」となるリスクがあります。ご自身の契約に払込免除が付いているかどうかは、保険証券で必ず確認すべき最重要ポイントです。
学資保険の契約者死亡についてよくある質問と回答

ここでは、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
Q. 親が亡くなったら保険料は自動で止まりますか?
A. いいえ、自動では止まりません。保険料の払込免除を適用するには、ご家族から保険会社へ連絡し、所定の手続きを行う必要があります。連絡をしないと保険料の請求が続いてしまうため、できるだけ速やかに手続きをしましょう。
Q. 死亡保険金は遺産分割の対象になりますか?
A. 受取人が指定されている死亡保険金は、原則としてその受取人固有の財産とみなされ、遺産分割の対象にはなりません。一方で、この記事で解説してきた**学資保険の契約そのもの(生命保険契約に関する権利)**は、解約返戻金相当額が相続財産となり、遺産分割の対象となります。この違いを理解しておくことが大切です。
Q. 契約者を変更するだけで贈与税がかかることは?
A. 通常、契約者が死亡したことに伴い、相続人が新しい契約者になる「名義変更」だけでは贈与税はかかりません。贈与税が問題となるのは、主に満期保険金を受け取る際に「保険料を負担してきた人」と「受け取る人」が異なる場合です。
Q. 満期金の受取人を子どもにすると税金は高くなる?
A. はい、その可能性が高いです。親が保険料を負担し、満期金を子どもが受け取ると「親から子への贈与」とみなされ、贈与税の対象になります。一方、親自身が受け取れば所得税の対象となり、多くの場合、贈与税よりも税負担は軽くなります。お子さまのためを思って受取人に指定した結果、かえって多くの税金を納めることにならないよう注意が必要です。
この記事を読んで少しでも安心されたなら、次の一歩として、まずは保険証券を手に取って内容を確認してみませんか? いざという時に慌てないための最大の備えは、現状を正しく把握しておくことです。
万が一に備えて今できること、契約内容の再確認を

ここまでお疲れさまでした。最後に、これからの安心のために「今できること」を一緒に確認して、この記事を締めくくりたいと思います。
不安を安心に変えるための最初のアクションプラン
ここまで読んでいただき、契約者が亡くなった場合の学資保険の扱いや手続きについて、全体像をご理解いただけたかと思います。漠然とした不安を具体的な安心に変えるために、今できる最も効果的なことは、ご自身の保険証券を取り出し、契約内容を確認してみることです。
公園帰りの午後、お子さまがお昼寝している少しの時間でも構いません。何が書かれているかを確認し、もし分からないことがあれば保険会社のコールセンターに問い合わせてみる、というのも一つの手です。現状を把握するだけで、心の負担はきっと大きく軽くなるはずです。
保険証券で今すぐ確認すべき3つの重要ポイント
保険証券を手に取ったら、特に以下の3つのポイントをチェックしてみてください。
- 「保険料払込免除特約」の有無
- 特約が付いているか、その適用条件(死亡・高度障害など)はどうなっているかを確認しましょう。
- 契約者と受取人の名前
- 現在の契約者と、満期保険金の受取人が誰になっているかを確認します。もし離婚などを経験されている場合は、変更手続きが済んでいるかも確かめてはいかがでしょうか。
- 保険会社の連絡先
- いざという時にすぐ連絡できるよう、証券番号とお客様センターの電話番号を控え、家族の誰が見ても分かる場所に保管しておくことをおすすめします。
専門家はどこにいる?困った時の相談先リスト
ご自身の保険証券を確認し、それでも不明な点があったり、相続など複雑な問題が絡んだりする場合は、専門家に相談するという選択肢もあります。一人で抱え込まず、頼れる先に助けを求めましょう。
- 契約内容の確認: ご加入の保険会社のコールセンター、または担当の営業職員
- 保険全般の見直し: 独立系のファイナンシャルプランナー(FP)、保険ショップの相談員
- 相続や税金の手続き: 税理士、弁護士、司法書士などの専門家
- 公的な相談窓口: 各市区町村の無料法律相談、税務署の電話相談センター